大判例

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東京高等裁判所 昭和30年(う)3668号 判決

被告人 金明達

〔抄 録〕

論旨第一点について。

本件に於て昭和三十年七月二日附、同年十月六日附及び同月十一日附各追起訴状にはいずれも検察官事務取扱検察事務官鈴木衛の署名があり、又原審第二乃至第四回公判に同検察事務官が立会つて開廷され、原審判決書にも公判出席検察官として同検察事務官の氏名を記載してあることは所論のとおりである。而して所論は公訴の提起は検察官がこれを行うものである。又公判廷に出席するのも検察官でなければならないとし、検察官ではない検察事務官の公訴提起及び公判出席はいずれも違法であつて、原審の訴訟手続には法令の違反があるものと主張する。しかし検察庁法第三十六条は「法務大臣は、当分の間、検察官が足りないため必要と認めるときは、区検察庁の検察事務官にその庁の検察官の事務を取り扱わせることができる」と規定しており、同条の規定に基いて、法務大臣によつて区検察庁の検察官の事務を取り扱うことができるものとされた検察事務官は、区検察庁の検察官の事務に関する限りに於ては、これに対応する簡易裁判所に公訴を提起することができるし、同裁判所の公判廷に出席することもできるといわなければならない。本件で横須賀検察庁検察官事務取扱検察事務官鈴木衛が横須賀簡易裁判所に公訴を提起し、その公判廷に出席しているのは右検察庁法第三十六条に由来する正当な手続であり、所論のように同法第三十二条及び検察事務章程に基くものではなく、従つて右手続が検察庁内部の規則に基いて刑事訴訟法及び刑事訴訟規則を無視した違法のものであるとはいえないこと明らかであるし、原審判決書に検察官の官氏名を記載するに代えて検察官事務取扱検察事務官鈴木衛と記載してあることも違法なものではない。それ故原審訴訟手続に法令の違反があるとの論旨はいずれも理由がない。

同第四点について。

被告人が屑鉄商を業とすることは所論のとおりである。従つて屑鉄商たる営業が本件賍物故買を為す機会を与えたということは或はいい得るところであるとしても賍物故買行為がその営業であるとはいえないこと明白であるのみならず、本件の多数囘に亘る各賍物故買が営業的な機会に隨伴したからといつてそれを包括的な一個の犯罪と認めなければならないものではない。又本件犯行が短期間に接続して行われ、その犯行の場所、罪質に於て同一であるにしても、それ故に単一の犯意に基いて行われたとは認められない。所論は犯意の単一であることを前提とし、本件が単純一罪であることを主張し、それ故に原審が被告人の各所為を併合罪とし刑法第四十五条第四十七条第四十八条を適用したことを以つて法令の適用に誤があると主張するのであるが、その理由がない。

(近藤 吉田作 山岸)

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